【088】オピニオン:私の愛した日本野球
「朝日新聞 2009.10.14 朝刊」に「オピニオン:私の愛した日本野球」と題して、元千葉ロッテの監督であるボビー・バレンタイン氏のインタビュー記事が掲載されていた。プロ野球というテニスとは違った土俵ではあるものの、そのインタビューの内容は、プロテニス界にとっても、いろいろと示唆する内容で参考になるので、覚書として引用しておこう。
最初に、日本の野球を評して、以下のように述べている。
「選手達は一生懸命練習するし、特に守備面で正確なプレーをする。バッテリーは、配球を戦略的に組み立てて打者を打ち取ろうとする。試合前のミーティングでも、スコアラーの情報を熱心に受け取り、理解する努力をしています。これらは大リーグではあまり重視していません。細部にまで心を配る日本の文化、国民性が表れていると感じました。(中略)試合中、ファンは選手の活躍をたたえ、選手はその声に手を挙げ、一礼して応える。こういった関係は特に好ましいものでした」
これだけでも、充分に参考になる内容である。特に、外国人ならではのコメントが表現されているので、日本人として再認識すべき内容である。特に「細部まで心を配る日本の文化、国民性」ということは、日本に使っていると忘れがちな、日本人として、我々に生まれつき備わっている世界に誇るべき「強み」である。「細部にこだわった」練習を実践することは必要だが、それにもまして細部にまでこだわった戦略を持って、試合に臨む姿勢が必要であろう。身体能力に劣る日本人が、世界で戦い勝利するための早道は、まさにこの「細部にこだわる文化」をどうやって活かすか、であると私は勝手に信じている。
更に、記事は続く。
「日本では、選手が失敗を恐れる気持ちが強いと感じます。選手の周りにいる考えの足りない人たちは、結果だけを気にする。すると選手たちも結果、結果と考えてしまうのです。(中略)プレーをエンジョイするようになれば、結果はついてくるのです」
上記は、かなり説得力がある。「日本は失敗を許さない文化」とは、最近読了した経済に関する書籍であるナシーム・ニコラス・タレブ著「ブラック・スワン(下)不確実性とリスクの本質」(ダイヤモンド社:2009年6月)
にも記述されている。失敗すること、即ちチャンレンジすることで成長してきたアメリカと、失敗を許さない日本の文化では、長い時間をみた時には、想像以上の差ができてしまう、と指摘する。これも、日本のテニス界全体に当てはまる、と私は信じる。
プロの世界に関しても、是非テニス界が知っておく必要がある内容が掲載されている。
「日本のファンは一生懸命、応援してくれるが、その見返りが小さすぎます。(中略)ファンのニーズは以前とは変わっています。ただ3時間、野球をみればいいというものではなく、もっと多くのことを求めています。選手と写真を撮ったり、サインをもらったりするイベントもその一つでしょう。選手との交流の瞬間を通じて、野球体験の思い出は長く残ります。プレーや勝ち負けだけでなく、球場に来ること自体を楽しいと感じてもらいたいのです。多くのファンを獲得できれば、球場を改修できるし、テレビで見たいというニーズも高まるでしょう。その収入で、プロ野球をより大きなビジネスにしなければなりません。それが年俸、選手のセカンドキャリアといった魅力的な環境を作るのです。」
この内容は、テニス界としては肝に銘じる必要はないだろうか。日本野球が1100億円市場で安定しているといわれているが、それでも更に上を目指す必要がある、と指摘している。テニスは、たったの100億円市場・・・関連企業やファンがテニスにそっぽを向いたら飛んでしまうような小さな世界であることを自覚する必要がある。
2009年、日本のテニスを牽引してきた多くのプロテニスプレーヤが引退を表明した。杉山愛選手、森上亜希子選手、岩渕聡選手・・・男女を問わず、引退は必ずやってくる試練だが、2009年ほど、トッププレーヤが一度に引退を表明する年は少ないと思うが。
これを機に、「テニス界」を見直すには良い時期になっているのではないだろうか・・・と、全くの素人が、感慨深くテニスを傍観している・・・



